旅先での川柳 など        ヤルデア研究所 伊東義高                             


大坂にて いつ?)
地下鉄の 大坂訛り 淡くなり
大坂や キタは人間 ミナミ人
串カツも 昔の味の 新天地
たこやきも 小粒になりぬ 秋の風
二十円の ホルモン焼きは 枯れ葉なり

モツの香で じゃんじゃん横丁 だと分かり
立ち飲み所 今日の稼ぎを 喉で飲み
フグうどん 六百円とは どんなフグ?
フグ定食 老眼鏡を 掛け直し
十円の 刻みで店は 品を積み

通天閣 五百円ほどの 視界かな
浪速では 床屋の洗髪 シャボンなり
飛田では 昔ながらの ネズミ声
ルンペンは ラジカセ枕に 昼寝かな
三十度 パンチパーマも だれた顔

張り店は 飛田の路地の 忘れな草
茹でシラス ポンズで食す 乙な智恵
横丁は 見るもの聞くもの 五七五

広島にて いつ?)
銀山(カナヤマ)町 ちょっと下れば 幟(ノボリ)町
身動きも 出来ぬ小部屋の 残暑かな
西に行く ほどチャンネルの 数が減り
ご当地に 合わせて野球の 談義をし
ハンカチと タオルをもって 夏のたび

一枚の お好み焼きで 腹膨れ
講義後は 飲むより他の 元気なし
盛り上がり 遅い研修 昼は「モリ」
地方では 巨人戦は 一人で観
日本中 朝飯のメニュー 相似たり

ビジ・テルの 湯船は子供の 背に合わせ
ビジ・テルで おならをしても 窓開かず
連泊は 洗濯物の 綱を張り

(初秋の名古屋にて S62.9)
秋空を 抉り取りけり 金の鯱
空堀や 草の刈り株 赤とんぼ
櫓には 青銅の鯱 名古屋城
避雷針 金鯱守って 天に立ち
城跡や 松の木立の 風密か

石垣の 隙間に潜む 五百年
あずまやの きしめんの海苔 風に舞い
きしめんは 茹るも伸びるも はやいこと

埼玉県比企郡吉見町 S62.9)
百穴は 昔の墓の 団地なり
百穴は 水はけ完備の 納骨所
横穴の 点したりけん 光り苔
コロボックル 何をか鑿に 用いけん
鳴く蟲に 刺す蟲飛ぶ蟲 山の宿

ほろ酔いが オクターブ上げる 研修場
研修所 近くは蟲も 声ひそめ
濡れながら 恋を競うか 蟲の声
何もない 宿には蟲の 夜伽かな
秋雨を 避けて灯による うんかかな

某所にて S62.8〜9)
腕時計 書棚に預けて 盆休み
ハンカチを タオルに替える 夏の雲
階段を 二段ずつ登りし 日の懐かしさ
子の躾 せぬ親増えぬ グリーンカー
旅先で 馴染みの店が 出来かかり

不景気の 縞模様で飲む 旅講師

清水にて いつ?)
そうめんは そうめんなりに 少し待ち

(初秋の修善寺にて S62.9)
荒れた肌 覆う物なし 夏の富士
荒れた肌 見せなばやと思う夏の富士
停電が 名物となるか 伊豆の宿
プールにも 秋の色あり ニューライフ
年川や 頼朝も鮎を 追いにけん

見馴れたる 伊豆の山々 句にならず
空調を 止め窓開ける 夜業かな

名古屋にて S62.9敬老の日)
大門も 今や裏木戸 秋の風
休日は 飲み屋の品書き 欠 目立ち
安酒場 どんな物にも 紅生姜
板前の 隠し戸棚に 缶チュウハイ
水槽の 鯵 今生の 舞踊り

水槽の 泥鰌お客に 尻を上げ
名古屋でも コウチン今や 語り種
客が飲む 側で仕舞いの掃き掃除
秋の夜を 静かに飲ませる 婆一人
安宿は よしなと土方が 解説し

ひたすらに 辛さと旨さの 朝鮮焼き
焼き肉も 激辛ブームか 汗が噴き
乱暴に 聞こえる女給の 名古屋弁
柳橋 名前ばかりの 柳かな
幽霊も 出どこに迷う 柳橋

街外れ 大正の家並み 傾きて
秋空を 斬り裂きて立つ 金の鯱

愛知護国神社にて S62.9)
区画なす 護国神社の 緑かな
白髪や 祝詞にむせぶ 英霊会
幾星霜 大和の砲弾 立ちて在り
青錆びる 鳥居の根元 蟻の列

広島の縮景園にて いつ?)
赤とんぼ 縮景園の 案内人
縮景園 蝉採る親子 汗光る
縮景園 土橋木の橋 石の橋
蝉が採れ 未だ老いずと 遠い空
縮景園 原爆の跡 大銀杏

縮景園 木立のかなた 白いビル
薬草園 全部飲んだら 寝込みそう
縮景と 絶景とでは ちょと違い

広島名物お好み焼き村にて いつ?)
中央通の 直ぐ脇の お好み村が 人を呼ぶ
古く汚い 木造の お好み焼き屋の マーケット
熱気と匂いが 渦を巻く 食い気と飲み気の マーケット
暖房完備の 板の前 スペシャル一つと 腰下ろす
薄焼き一枚 先に焼き キャベツを山と 積上げて

モヤシ豚肉 天玉を 乗せたらエイと 返し技
別に炒めた ラーメンを 薄焼き卵の 上に乗せ
二つの山を ドッキング しばし押さえて 火を通す
特製ソースで 出来上がり 速くて旨くて ちょと安い

(第二の故郷・九州にて いつ?)
車窓越し 鉄都の煙 冷え冷えと
ボタ山も 青山となる 三十年
遠賀川 石炭(スミ)は無くとも 黒い水
博多駅 大きゅうなったが 匂いなし
天神町 三十年で 異国かな

箒目に ソの字の靴跡 安国寺
チャンポンも 上品となり 江戸の味
焼きうどん バターが入って 箸止まり

博多・長浜の屋台ラーメン屋にて いつ?)
秋風に ラーメン屋台の 品定め
串焼きの 歯向かう固さ 貝柱
名物の ラーメン鉢の 底を舐め
残照に キビナゴ摘まむ 屋台かな
半月や 博多湾に 淡く散り

黄昏に 烏賊釣り舟の もやい解き
フグ船の ウキ行儀良く 月に映え
腹ごなし 夜の魚市 迷い込み

宮島の厳島神社にて いつ?)
幾とせのしぶきかぶりぬ 大鳥居
吊り灯篭 朱殿の柱に 秋の影
苦しげに 老いつつ立てり 能舞台
鹿の糞 松ぼっくりと 親子連れ
松が枝に お御籤たわわ 蝉の声

信号に 立ち止まり
なかなか前に 進めない
苛々するのは 吾一人
でん でんと構える 地元衆
しゃ 社内広告 読み返し

みなが称える 名所とて
やっとのことで 来てみれば
自慢の鳥居 色が褪せ
また来るほどの 気は起きず

暑さは昨日と 変わらねど
季節に切れ目は 無けれども
野山の姿 ややおかし
栗の実柿の実 山葡萄
日本一の 秋の色

暇に任せて ぶらぶらと
ロマンス溢れる 夜の街
新地・胡(エビス)町 銀山(カナヤマ)町
万円札が 飛んでいく

広島は 川と川との 隙間なり
広島は 都会と田舎が 溶け合わず
広島は 巨人びいきを 隅にやり

牡蠣いかだ 鳥居近くは 憚りて 敷き詰めわたる 安芸の海原
松風や 朱塗りの鳥居 波の上 夏の終りの 安芸の宮島
紅葉谷 さ迷い続けて 丘の茶屋 鳥居見下ろし ところてん吸う

宮島は 饅頭と杓子と 蝉の声
杓子では 荷物になると 箸を買い
桟橋も 社殿作りの 厳島
厳島 語らう友なく アナゴ飯
アナゴ飯 馴染みのアサリ 椀の種

鹿の餌 残るを鳩が 枝で待ち
木漏れ日に 夏の声出す 安芸の蝉
鹿の糞 したばっかりは 濡れ納豆
大聖院 石段を見て 引き返し
宮島や ああ宮島や の程でなし


(4年ぶりの秋田にて s62.10)
寂しげに 緋鯉流れる 旭川
旭川 しだれ柳が のぞき込み
四年ぶり 地震調査の 道辿る
震災の 傾きのまま 裏小路
大町で 小町を探す 秋の夜

郷土茶屋 秋田訛りも 少し添え
手間かけて 焼いた歯触り 切りたんぽ
焼きたんぽ 杉の香りと 味噌の味
新米の 味聞きながら 切りたんぽ
はたはたの 卵は歯と歯で 数かぞえ

ギバサとは 秋田の海の 青納豆
みずのたま 緑の数珠の 啜り込み
しょっつるの 貝焼きままごと 想い出し
姫様の 腰ほどの強さ 稲庭麺
信号を 見送ってまでの 道案内

野球放送 ない地方での 暇つぶし
交差点 近くの安宿 眠られず
立ち疲れ 脚の痙攣 脇の汗
稲庭の うどん尋ねて 川反街
稲庭の 麺は店ごとの 味をだし

吉見町にて いつ?)
大風や どんぐりごろごろ 八丁湖
パチパチと どんぐり踏みつつ 池巡り

仙台にて s62.10.20 株価3、836円急落)
秋の陽と 株は釣瓶の 如く落ち
社内弁 枯れ葉に似たり 笹蒲鉾
天然の シメジ深山の 気の子かな
片口の どぶろくそのまま 胃に流れ
遠き日を 偲びつイナゴを 指で食い

料理名 付けられるほどに 足運び
市街地は 街路樹だけの 杜の街
ビジ・テルの 便座冷たし 秋の朝
醜男の オコゼも刺し身で 美女の口

いわきにて s62.9)
平らとは 真っ赤な嘘なり 山と谷
いわきとは 医者と薬屋 続く町
常磐の サンマの刺し身 箸躍る
ウニ飯に ちょっぴり磯の 香が残り
常磐線 日立の辺りで 日が沈み

指定席 ヤーサンの隣に なろうとは

飯田にて いつ?)
鹿刺しと 蜂の子飯で 飯田かな

三重にて いつ?)
天ムスの 元祖にヤングの 知らぬ顔
宣長を 聞いても答える 人はなし
宣長は 墓で次郎長に 引けを取り
キャンペーン よそ目に城址 荒れたまま
鈴の屋は いつ吹き替えにしや 銀甍

和田金は やはりウシかった 高かった
和田金も 食って寝は牛に なるといい
観光地 駐車場は みな無料
伊勢神宮 もったいを付ける 宮内庁
伊勢うどん たまり醤油に 太く延び

戦災の むら焼けのまま 松阪市
車借り 五月の伊勢路 風に乗り

二見浦 思ってたよりも 海臭し
二見浦 思ってたよりも 岩近し
二見浦 思ってたほどの 岩の大きさ
二見浦 なぜか天の 岩屋あり
二見浦 なぜか蛙の 像多し (旅客の無事カエルを祈る?)

古い町 新しい施設 鳥羽の町
浦村の 牡蠣を仕上げて 的矢牡蠣
リアス式 緑と青の 入り交じり
大王岬は 波切港を 抱え立ち
真珠貝 柱の付け焼き 人の列

てこね鮨 今じゃかかあの 手抜き鮨
英虞湾の 養殖筏 鈍く映え
年老いた 海女の実演 ものわびし
遊覧船 飽きさせまいと 声を張り

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