胡座(あぐら) 百人一趣 ヤルデア研究所 伊東義高 C r yarudea 86D
・格調高い小倉百人一首と並べて不謹慎な狂歌:胡座(あぐら) 百人一趣
・[ ]は言葉の意味の解説。< >は掛け言葉の説明。
1. 秋の田の 刈り<仮>穂の庵(イホ)の 苫(トマ)を編(ア)らみ 我が衣手は 露に濡れつつ
金貸しは 借り手の家で 声を荒げ その懐手は 血糊濡れつつ
2. 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香久山(カグヤマ)
春なるに 夏来にけらし 白妙の 水着見すてふ あまたカタログ
3. 足引きの 山鳥の尾の 枝垂(シダ)り尾の 長長しき夜を 独りかも寝む
逢い引きの 振られも知らず したり顔 長長しき夜を 独りかも寝む
4. 田子の浦に 打ち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
東海の浦に 打ち出でてみれば 白浜に 不意に中性子の 雨は降りつつ
5. 奥山に 紅葉(モミヂ)踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき
リストラの 首を撫でつつ 泣く人の 声聞く時ぞ 秋は悲しき
6. 鵲(カササギ)の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
酔眼の 見渡せる端に 置くテレビ 白きを見れば 夜ぞ更けにける
7. 天の原 振りさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
虫眼鏡 振りかざし見れば 微かなる 通帳の中に 出でし利子かも
8. 我が庵(イホ)は 都の巽(タツミ) 鹿ぞ鳴く 世を宇治(ウヂ)<憂(ウ)し>山と 人は言ふなる
我が髪は 抜けるがままで 遂に無く 予を禿山と 人の言ふなる
9. 花の色は 移りにけりな いたずらに 我が身世に経(フ)<る<降る> 眺め<(ナガメ)長雨>せし間に
顔の色は 変はりにけりな ひたすらに 我が身尽して なだ宥めせし間に
10. これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(アフ)の関
共稼ぎ 行きも帰りも 別れては 知るや知らずや 晩の飯時
11. 海(ワタ)の原 八十(ヤソ)島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(アマ)の釣り舟
肝試し 出口めがけて 駆け出でぬと 人には告げよ 其処(ソコ)の化け物
12. 天つ風 雲の通い路(ヂ) 吹き閉じよ 乙女の姿 しば暫し留(トド)めむ
スピード[歌謡ユニット] の解散の路(ミチ) 吹き閉じよ 乙女の姿 暫し留めむ
13. 筑波嶺(ツクバネ)の 嶺より落つる 男女川(ミナノガハ) 恋ぞ積もりて 淵となりぬる
少な目の 見栄より始まる男女会(ゴウコン)で 恋ぞ積もりて ペアとなりぬる
14. 陸奥(ミチノク)の 忍ぶ文字摺(ズ) り[染め物の名前] 誰故に 乱れそ初め<染め>にし 我ならなくに
未知の子 の忍ぶ文字電 見し故に 乱れ初めにし 我ならなくに
15. 君がため 春の野に出でて 若菜つ摘む 我が衣手に 雪は降りつつ
君がため 丹精こめて 顔を剃る 我が衣手に 髭は降りつつ
16. 立ち分れ 稲葉(イナバ)<去(イ) なば>の山の 峰に生(オ)ふる 松<待つ>とし聞かば 今帰り来む
立ち分れ 間もなく掛かる ケイタイで 待つとし聞かば 今帰りこむ
17. 千早(チハヤ)振る 神代も聞かず 立田川 韓紅(カラクラナイ)に 水括(クク)るとは
手足振る 赤子もいつしか 立田川 唐紙破る ミスくらいはする
18. 住之江の 岸に寄る波 寄るさへや 夢の通い路(ヂ) 人目よ避くらむ
色好きの 奴に寄る年 寄るさへや 恋の通い路 人目付くらむ
19. 難波潟(ナニハガタ) 短き葦(アシ) の 節の間も 逢はで此の世を 過ぐしてよとや
ナンパ橋 短き足の 醜男(ブオトコ) も 声無くここを 過ぐしてよとや
20. 侘びぬれば 今将(はた) 同じ 難波なる 身を尽くし<澪標(ミヲツクシ)>ても 逢はむとぞ思う
詫びぬれど 今また同じ ナンパ振り 身を尽くしても 逢はぬとぞ思ふ
21. 今来むと 言ひし許(バカ)りに 長月の 有明けの夜を 待ち出づるかな
今済むと 言ひし許りの 長電話 有りたけのカード 使ひ切るかな
22. 吹くからに 秋の草木の 萎(シヲ) るれば 宜(ムベ) 山風を 嵐と言ふらむ
見るからに ギャルの掛け声 乱るれば むべジャニーズは 嵐[ユニット]と言ふらむ
23. 月見れば 千々に物こそ 哀しけれ 我が身一つの 秋にはあらねど
よく見れば 何処(イヅコ) も不況で 哀しけれ 我が身一つの 秋にはあらねど
24. 此の度は 幣(ヌサ)も取り敢(ア)へず 手向(タムケ)山 紅葉(モミヂ)の錦 神のまにまに
この旅は ビザも取り敢へず 空港へ ゲートの通過 神のまにまに
25. 名にし負(オ)はば 逢坂(アフサカ)山の 実葛(サネカヅラ) 人に知られで 来る由(ヨシ)もがな
名も無くて 端役ばかりが CMで 人に知られて 来る由もかな
26. 小倉山 峰の紅葉葉(モミヂバ)心有らば 今一度の 御幸(ミユキ)待たなむ
薄暗い 日本の景気 心有らば 今一度の バブル待たなむ
27. 瓶原(ミカノハラ) 湧きて流るる 泉川(イヅミガハ) 何時(イツ)見来てとか 恋しかるらむ
見かけだけ 別けて可愛い ジャニーズの いつまで売れる テレビ、CD
28. 山里は 冬ぞ淋しさ 勝りける 人目も草も 離(カ)れる<枯れる>と思へば
臍出しは 冬でも恥ずかしさ 無かりける 人目も彼も 呆れると思はず
29. 心当てに 折らばや折らむ 初霜の 置き惑はせる 白菊の花
心当てに 引かばや引かむ 宝くじ 買い惑はせる バラと連番
30. 有明けの 連(ツ)れなく見へし 別れより 暁(アカツキ)ばか許り 憂(ウ)き物は無し
合コンの 連れなく見へし 別れより 暁許り 憂き物は無し
31. 朝ぼらけ 有明けの月と 見るまで迄に 吉野の里に 降れる白雪
浅いボケ 有り丈の智慧 と見る迄に クイズの問に 揺れる白髪(シラガミ)
32. 山川に 風の架(カ)けたる 柵(シガラミ)は 流れも敢(ア)へぬ 紅葉(モミヂ)なりけり
不景気に 風邪を引きたる 死神は 見るにも堪へぬ 姿なりけり
33. 久方の 光長閑(ノド)けき 春の日に 静(シヅ)心無く 花の散るらむ
久々の 休み長閑けき 春の夜に 飲む酒も無く 花の散るらむ
34. 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
誰をかも 知る人にせむ パーティーの 話も昔の 侭ならなくに
35. 人はいさ 心も知らず 故郷(フルサト)は 花ぞ昔の 香(カ)に匂ひけり
人はいさ 心も知らず 送別会 手柄ぞ昔の 香(カ)に匂ひけり
36. 夏の夜は 未だ宵ながら 明けぬるを 雲の何処(イヅコ)に 月宿るらむ
式の夜は 未だ四月ながら 孕(ハラ)めるを 腹(ハラ)の何処(イヅコ)に 子の宿るらむ
37. 白露に 風の吹き敷く 秋の野は 貫き止めぬ 玉ぞ散りけり
リストラの 風の吹き敷く 職場では 貫き止めぬ 首ぞ散りけり
38. 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
忘らるる 客をば思はず 誓ひてし 売掛金の惜し くもあるかな
39. 浅茅生(アサヂフ)の 小野の篠原(シノハラ)忍ぶれど 余りてなどか 人の恋しき
朝飯の 前の鍛練 忍ぶれど 余りてなどか 腹の空くらむ
40. 忍ぶれど 色に出にけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで
忍ぶれど 色に出にけり 我が食ひ気 皿も食ふかと 人の問ふまで
41. 恋すてふ 我が名は未(マ)だき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそ初めしが
ネットする 我が名は未だき 立ちにけり 人知れずこそ 習ひ初めしが
42. 契り来ぬ 片身に袖を 絞りつつ 末の松山 波越さじとは
千切り食う おでんを口に 頬張りつ 人にマイクを 取られまじとは
43. 相見ての 後の心に 比ぶれば 昔は物を 思はざりけり
騙されし 後の心に 比ぶれば 昔は人を 疑はざりけり
44. 逢ふ事の 絶へてし無くは 中中(ナカナカ)に 人をも身をも 恨みざらまし
逢ふ事の 絶へてし無くば 時々に メイルする暇 惜しみざらまし
45. 憐(アハ)れとも 言ふべ可き人は 思ほへで 身の徒(イタヅラ)に 成りぬべ可きかな
憐れとも 言ふべきものぞ 職も無く 身の徒(イタヅラ)に 成りにけるかな
46. 由良(ユラ)の渡(ト)を 渡る舟人(フナンド)梶(カヂ)を絶へ 行方も知らぬ 恋の道かな
揺れる戸を 抑える傍ら 火器を絶ち 行方指示する 地震訓練
47. 八重葎(ヤヘムグラ) 茂れる宿の 淋しきに 人こそ見えね 秋は来にけり
八重桜 茂れる宿の 待ち合はせ 人こそ見えね 飽きは来にけり
48. 風を痛み 岩打つ波の 己(オノレ) のみ<鑿> 砕けて物を 思ふ頃かな
喉を痛み マイク持つ身の 己のみ ふざけて歌を 歌ふ真似かな
49. 御垣守(ミカキモリ) 衛士(ヱジ)の焚く火の 夜は燃へ 昼は消えつつ 物をこそ思へ
てんこ盛り 母の炊く飯 夜も食へ 昼も食へでは 腹をこそ下せ
50. 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
君がため 惜しからざりし お金さへ 多くもがなと 思ひけるかな
51. 斯(カ)くとだに えやは伊吹(イブキ)の 指燃草(サシモグサ) 然(サ)しも知らじな 燃ゆる思ひを
格闘だね エイヤは息吹の 喉笛さ さしも知らずに K1[格闘技]を観る
52. 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら 尚(ナホ) 恨めしき 朝ぼらけかな
借りたれば 返すものとは 知りながら 尚恨めしき 催促の声
53. 嘆きつつ 独り寝(ヌ)る夜の 明くる間は 如何に久しき 物とかは知る
嘆きつつ 独り寝(ヌ)る夜の 明くる間は 如何に空しき 物とかは知る
54. 忘れじ の行く末までは 堅ければ 今日を限りの 命ともがな
忘れじの 行く末までは 覚束(オボツカ)ず 今日を限りの 命ともがな
55. 滝の音(ネ)は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて 尚(ナホ)聞こえけれ
逢ふことの 絶えて久しく なりぬれば 名こそ何とか 尚(ナホ)覚へけれ
56. 在らざらむ 此の世の外(ホカ) の 想ひ出に 今一度の 逢ふ事もがな
在らざらむ 此の世のほかの 想ひ出に 今一度の 呑むこともがな
57. 巡り逢ひて 見しやそれとも 別(ワカ)ぬ間に 雲隠れにし 夜半(ヨハ)の月かな
巡り逢ひて 見しやそれとも分(ワカ)ぬ間に 雲隠れにし 自己破産かな
58. 有馬山 猪名野(ヰナノ)笹原(ササハラ) 風吹けば いでそよ[それ]<そよそよ>人を 忘れやはする
有るまじや 田舎(ヰナカ)男の 法螺(ホラ)吹けど いでそよ人は 信じやはする
59. 休(ヤス)らはで 寝なましものを 小夜(サヨ)更(フ)けて 傾(カタブ)く迄(マデ)の 月を見しかな
休み取り 寝ているうちに 社はこけて 傾(カタブ)く迄(マデ)の 夢を見しかな
60. 大江山 幾野(イクノ)<行く>の道の 遠ければ 未(マ)だ文も見ず 天の橋立
シドニーへ 行くぞの道の 遠ければ 未(マ)だ埒(ラチ)も見ず 強化合宿
61.古(イニシヘ)の 奈良の都の 八重桜 今日(ケフ)九重に 匂ほひけるかな
古(イニシヘ)の 奈良の都の 八重桜 今日(ケフ)九重に ビルに囲まる
62. 夜を篭(コ)めて 鶏(トリ)の空音(ソラネ)は 謀(ハカ)るとも 世に逢ふ坂の 関は許さじ
大学は 鶏(トリ)の空音(ソラネ)は 謀(ハカ)るとも 金が無くては 裏門許さじ
63. 今はただ 思ひ絶えなむ と許(バカ)りを 人づてならで 言ふ由もがな
今はただ 思ひ絶えなむ と許(バカ)りを 言はれる前に 言ふ由もがな
64. 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに 現はれ渡る 瀬々の網代木(アジロギ)
朝飯も 食はねば息も 絶え絶えに 現はれ渡る 肋(アバラ)骨かな
65. 恨(ウラ)み侘(ワ)び 干さぬ袖だに 有るものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
恨(ウラ)み侘(ワ)び 解(ゲ)せぬ客だに 有るものを 只管(ヒタスラ)謝る 身こそ惜しけれ
66. 諸共(モロトモ)に 哀(アハ)れと思へ 山桜 花より他に 知る人ぞなし
諸共(モロトモ)に 哀(アハ)れと思へ 同期生 端(ハナ)より他に 知る人ぞなし
67. 春の夜の 夢許(バカ)りなる 手枕(タマクラ)に 甲斐(カヒ)無く立たむ 名こそ惜しけれ
春の夜の 夢許りなる 片枕 甲斐(カヒ)無く絶(タ)たむ 名こそ惜しけれ
68. 心にも 有らで憂(ウ)き世に 長らへば 恋しかるべき 夜半(ヨハ)の月かな
心にも 有りて憂(ウ)き世に 長らへむ 流星群を またも見まほし
69. 嵐吹く 三室(ミムロ)の山の 紅葉葉(モミヂバ)は 立田(タツタ)の川の 錦なりけり
嵐[ジャニーズ]歌う バレーボールの 国際戦 たった二勝の 惨めなりけり
70. 寂しさに 宿を立ち出で 眺むれば 何処(イヅク)も同じ 秋の夕暮れ
寂しさに 株式欄を 眺むれば 何処(イヅク)も同じ 秋の夕暮れ
71. 夕されば 門田(カドタ)の稲葉 訪れて 蘆(アシ)の丸屋(マロヤ)に 秋風ぞ吹く
引き去れば 目立たぬはずの ローンでも あっしの預金に 秋風ぞ吹く
72. 音に聞く 高師(タカシ)の浜の 仇波(アダナミ)は 掛けじや袖の 濡(ヌ)れもこそすれ
音に聞く 老舗(シニセ)の店の 味付けに 掛けじや塩を 笑はれもこそすれ
73. 高砂の 尾上(ヲノヘ)の桜 咲きにけり 外山(トヤマ)の霞 立たずもあらなむ
高砂の 謡いは結婚 行進曲 外様(トザマ)の仲人 立てずもあらなむ
74. 浮かりける 人を初瀬(ハツセ)の 山颪(ヤマオロシ) 激しかれとは 祈らぬものを
受かりける 人を嫉妬(ヤツカ)む 棚卸(タナオロ)し 激しかれとは 祈らぬものを
75. 契り置きし 指燃草(サシモ)が露を 命にて 哀(アハ)れ今年の 秋も去(イ)ぬめり
作り置きし おかず皆乗せ 汁掛けて 憐(アハ)れ今夜の 飯も犬並み
76. 海(ワタ)の原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居(クモヰ)に紛(マガ)ふ 沖つ白波
若乃花 土俵に出でて 久し振り おばんに紛(マガ)ふ 弛(ユル)む皺腹(シワバラ)
77. 瀬を速み 岩に急(セ)かるる 滝川の 割れても末に 逢はむとぞ思ふ
足を速み 息をせかるる 改札の 割れても末に 逢はむとぞ思ふ
78. 淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨(スマ)の関守(セキモリ)
縄暖簾(ノレン) 通ふお客の 泣く声に 幾夜出(イダ)せぬ ツケの催促
79. 秋風に 棚引(タナビ)く雲の 絶え間より 漏れ出づる月の 影の清(サヤ)けさ
裏町で 袖引く声の 絶え間より 漏れ聞こゆる 喘(アヘ)ぎ悩まし
80. 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
黒からむ 心も知らず 金髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
81. 不如帰(ホトトギス) 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明けの 月ぞ残れる
競輪場 泣きつる方を 眺むれば ただ紙屑の 券ぞ残れる
82. 思ひ侘(ワ)び さても命は 有るものを 憂<(ウ)きに堪えぬは 涙なりける
思ひ切り とても雨量は 有るものぞ 雨季に堪えぬは 堤(ツツミ)なりける
83. 世の中よ 道こそ無けれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
世の中よ 道こそ無けれ 乱れきる 警察官にも 痴漢ぞおるなる
84. 長らへば 亦(マタ)この頃や 忍ばれむ 憂(ウ)しと見し世ぞ 今は恋ひしき
長らへば 亦(マタ)あの頃や 忍ばれむ 不味(マズ)かりし食事 今は恋ひしき
85. 夜もすがら 物思ふ頃は 明けやらぬ 閨(ネヤ)の暇さへ 連(ツ)れ無かりけり
夜もすがら 文書く時は 明けやらぬ 閨(ネヤ)の暇さへ つい無かりけり
86. 嘆けとて 月やは物を 思はする 託(カコ)ち顔なる 我が涙かな
選外の 報(シラ)せは物を 思はする 託(カコ)ち顔なる 我が涙かな
87. 村雨の 露も未だ干ぬ 槙(マキ)の葉に 霧立ち上(ノボ)る 秋の夕暮れ
野辺(ノベ)送り 泪(ナミダ)未だ干ぬ 未亡人 噂立ち上(ノボ)る 秋の夕暮れ
88. 難波江の 蘆(アシ)の仮<刈り>寝の 一夜ゆゑ 身を尽くし<澪標(ミヲツクシ)>てや 恋ひしかりける
終電の 駅の仮寝の 一夜ゆゑ 身を縮めてや 寒たがりける
89. 玉の緒よ 絶えなば絶えね 長らへば 忍ぶることの 弱りもぞする
玉の緒よ 絶ゆとも絶ゆな 長らへよ 忍ぶることも ものともやせむ
90. 見せばやな 雄島(ヲジマ)の海士(アマ)の 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変らず
見せばやな 渋谷の女(アマ)の 顔黒(ガングロ)は 塗りにぞ塗りし 色は変らず
91. 螽斯(キリギリス) 鳴くや霜夜の 狭筵(サムシロ)<寒し>に 衣(コロモ)片敷き 一人かも寝む
有珠山(ウスザン)の 噴(フ)くや寒夜の 避難所に 衣(コロモ)片敷き みんなごろ寝む
92. 我が袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間も無し
我が株は 店頭に見えぬ 屑株で 人こそ知らね 変ること無し
93. 世の中は 常にもがもな 渚(ナギサ)漕ぐ 海士(アマ)の小船(オブネ)の 綱手(ツナデ)愛(カナ)しも
世の中は 常にもがもな 警官の 痴漢・麻雀 この世悲しも
94. み吉野の 山の秋風 小夜(サヨ)更(フ)けて 故郷(フルサト)寒く 衣打つなり
ラスベガス 街の秋風 小夜(サヨ)更(フ)けて 懐寒く 博打(バクチ)打つなり
95. 大けなく 浮世の民を 覆ふかな 我が立つ杣(ソマ)に 墨染めの袖
大けなく 浮世の民を 救ふとて 怪しき宗教(ヲシヘ) 「最高」「定説」
96. 花誘ふ 嵐の庭の 雪ならで 経(フ)り[古(フ)り]<降り>行くものは 我が身なりけり
花誘ふ 芸能界に 女子アナが フリーになるのは 一部なりけり
97. 来ぬ人を 松帆(マツホ)<待つ>の浦の 夕凪(ユフナギ)に 焼くや藻塩(モシホ)の 身も焦がれつつ
来ぬ人を 待つのに飽きて 自棄糞(ヤケクソ)に 押すやケイタイ 身も焦がれつつ
98. 風戦(ソヨ)ぐ 奈良の小川の 夕暮は 禊(ミソギ)ぞ夏の 標(シル)しなりけり
風戦(ソヨ)ぐ 巷(チマタ)のギャルの スカートの 短さぞ夏の 標(シル)しなりけり
99. 人も愛(ヲ)し 人も恨(ウラ)めし 味気無く 世を思ふ故に 物思ふ身は
人も愛(ヲ)し 人も恨(ウラ)めし 気紛(キマグ)れに 世を思ふ故に 物思ふ身は
100. 百敷(モモシキ)や 古き軒端(ノキバ)の 忍ぶ[忍ぶ草]にも 尚(ナホ)余りある 昔なりけり
定年や 古き社報で 偲ぶれば 尚(ナホ)余りある 昔なりけり